こんにちは、カギ尻尾です。
絵を飾るのに良い場所についてお話しした前回記事、インテリア面(空間バランス)と作品保護(絵画を痛めない)面の両方の観点から絵を飾る場所について考えました。
今回はさらに、あなたが実際、壁に絵を取り付けるとき役立つような「実践編」をお届けしたいと思います。
取り付けるためのアイテムや、壁の特性を踏まえた上での取り付けポイントなどもご紹介します!
壁の材質は、現在主流になっている壁材のひとつ「石膏ボード(プラスターボード)」に絞ります。
石膏ボード壁に絞る理由は、日本の住宅でよく使われている建材であることに加えて石膏ボードの弱点があまり知られていないように感じるからです。
私自身、石膏ボード壁の弱点に直面するまではよくわかっていませんでした。
ぜひ、あらかじめ弱点を知って、あなたの大切な絵を安全に飾って欲しいです。
さっそくですが、「石膏ボード壁に絵を飾るとき押さえておくべきこと」はこちらです。
・始めに壁の材質と飾るものの重さを確認しておく
・石膏ボード壁にフックを取り付けるメリット・デメリットの両方を知っておく
(特に、石膏ボードは脆いという弱点を知っておくことが大切です)
・石膏ボード壁の弱点を踏まえた安全対策がされているフックを選ぶ
・石膏ボードの空洞部分に注意する
(石膏ボード壁は、桟が入っていない部分は空洞状態です、ポイントを押さえてフックを取り付けてください)
以上の4つです。
それでは、これからこの4つについて詳しくお話ししていきます!

15年間、作品を額縁にいれる額装の仕事をしていた私カギ尻尾
絵の取り付けはひと通りの知識を学びましたが、その後アンティーク家具店で働いたとき、実際に絵画やミラーを壁に取り付ける作業を数多くこなして得た知識もたくさんありました
今回は、実体験もあわせて石膏ボード壁に絵を飾るとき大切なことをまとめています!
この記事が、石膏ボード壁の弱点を知っていただき、安全にすてきなウォールデコレーションを楽しむための参考になったらとてもうれしいです!
石膏ボード壁に絵を飾るとき押さえておくべきこと4つ
それではさっそく、冒頭でさらっとお話しした「石膏ボード壁に絵を飾るとき押さえておくべきこと4つ」を詳しくお話しします。
はじめに、確認しておくこと
まずは、これ抜きでは作業が始まらないという最初の一歩。
それは、1に壁の材質を確認すること、2に飾るもの(額縁)の重さを知ることです。
この2つをないがしろにしては適切なフックを購入することはできません。
1.壁の材質を確認する
壁の材質は、木壁、土壁など様々ありますが、現代住宅の壁は大きく分けて石膏ボード(プラスターボード)とコンクリートが一般的になっています。
マンションだと石膏ボードとコンクリートの両方が場所によって使い分けされていることが多いです。

外壁や隣家との境にある壁(界壁)は、耐衝撃やプライバシー保護の観点から『コンクリート壁』
間仕切りなどの内壁は『石膏ボード』という感じに使い分けされることが多いよ
設計図があれば確実な情報が手に入りますが、そうはいかない場合もあると思います。
でも、大丈夫です! 石膏ボード壁かコンクリート壁かを見極めることはそんなに難しくないんですよ。
手で軽く叩けばわかります!

叩いたとき、硬くて全く音が響かないのは『コンクリート』、
それほど硬さを感じなくて音が響くのは『石膏ボード』です!
もし万が一どうにもわからんというときは、画鋲(押しピン)を刺してみてください。
刺さらなければそれはコンクリートということになります。
フックのパッケージには「石膏ボード用」とか「コンクリート用」など、どの壁向けの商品なのか表記されているので、壁の材質が分かっていれば合うものを選ぶことができます。
2.飾りたいものの重さを確認する
額縁を購入したとき、箱などに重さが表記してあるものもあります。
全部そうならいいのですが、表記していない額縁も多いです。
そんなときは、自宅の体重計でも測ることができますよ。

体重計で重さを測るやり方はこんな感じ
自分の現在の体重を測る➡︎(A)
額縁を持って体重計に乗り体重を測る➡︎(B)
(B)ー(A)= 額縁の重さ
絵画を飾るためのフックには通常、『安全荷重』が表記されてされています。
安全荷重が飾りたいものの重さに対して少し余裕のあるフックを選ぶようにしましょう。

横幅が長い作品を飾るときは、一点で吊らずに左右二ヶ所で吊るのがおすすめだよ
耐久性が上がることはもちろん、傾きにくくなるよ!
フックは、画材店や額縁店・ホームセンター・インターネットなどで購入できます。
額縁を購入したときに、どんな壁に飾りたいのかお店の人に相談してその場でフックを買うのもおすすめです。
石膏ボードにフックを取り付けるメリット・デメリット
メリット
●特別な工具を持っていなくても簡単に取り付けできる!
石膏ボード壁に絵画を取り付けるメリットはこれに尽きると言っても過言ではありません。
コンクリート壁に比べてフックの取り付けが圧倒的に楽です。
コンクリートだと「振動ドリル」など専門的な工具が必要ですが、石膏ボードなら測るためのメジャーや金槌など身近なものでできますよ。
デメリット
●ピンが抜けてきてしまうことがある、ネジが効かないことがある!
重要なことなのですが、石膏ボードの壁はピンが抜けてきてしまう可能性があります。
なぜかというと、石膏ボード壁は、厚さが約1cmくらいの石膏ボードを『胴縁』と呼ばれる桟に固定するのが一般的です。
つまり、桟が当たっていない部分の石膏ボード壁は、空洞状態です。

空洞部分の石膏ボードって、長いピンでも簡単に抜けちゃうくらい、本当にもろいんです・・・
●そもそもコンクリートほどの強度はなく、重いものを取り付けるのには向かない
フックなどを取り付ける難易度が上がるコンクリート壁ですが、取り付けた後の強度は石膏ボードより圧倒的に勝ります。
大きくて重い絵画を飾る場合は、コンクリート壁にするか、壁の張り出している部分(コンクリートであることを確認)にピクチャーレールを取り付けて飾るなど、石膏ボード壁を避けるのが賢明です。
フックの選び方
「石膏ボード用」と表記されたフックを選ぶことはもちろんなのですが、それだけでも様々な商品が販売されています。
石膏ボード壁に飾る上で必要な安全対策が施されている商品を選びましょう。
忘れがちなフックの材質も要チェックポイントです。
ピンを打ち込んだ後、複数の針が開くことで強度が増すよう設計されているフック
こちらは石膏ボード壁の弱点を考えて作られていて、ピンを押し込むと壁の中で複数の針が開くという世界初の設計になっています。
華奢な見た目ながらも、石膏ボードに対して強度をもたせているフックです。
私が絵を飾るときよく使っているのが、このタイプの「ハイパーフックかけまくり」という商品です。


ピンの長さが短く取り付けに金槌すら必要ないため手軽で、抜き跡が小さくなるように作られているところも魅力です。
写真は安全荷重が3kgまでの商品ですが、それより小さいものも大きなものも販売されていますよ!
斜めに開いた針穴にそってピンを差し込むことで強度が増すよう設計されているフック
こちらのフックも石膏ボード壁の弱点を考えて作られた商品です。
「Xフック」と呼ばれるタイプで、付属のピンを金槌(ハンマー)で壁に入れていくと、自然にピンが斜め下方向へ入っていくように設計されていて、下にかかる荷重に強度をもたせています。
Xフックは種類がたくさんあり、材質はステンレスと鉄、色はシルバー以外にもホワイト・ブラックなど(ホワイトとブラックは鉄製のみ)を選ぶことができます。
フックにかけた後、額縁の紐が外れないようにストッパーが付いているものもあります。
材質はステンレス・鉄・ABS樹脂などが主流
フック本体とピンとで材質が異なる商品も多いのですが、フック本体とピンの針部分はどちらもステンレスがおすすめ。
理由は、ステンレスが経年劣化など変質しにくい素材だからです。
こちらは先程ご紹介した商品「ハイパーフックかけまくり」の裏面です、きちんと部品全て材質が明記されています。

この商品は、フック本体だけでなく、ピンの針部分もステンレスなのが信頼できます。
鉄のフックだとサビてしまったとき壁を汚してしまうこともありますので要注意です。
色やデザイン
ほとんどの場合、フックは絵に隠れて見えなくなるので色やデザインは気にする必要はありませんが、額縁の吊り紐(チェーン)などを長くして吊り下げる場合などは、フックも壁と同じ色にするなど目立たないようにするか、逆に思い切って絵画の雰囲気に合わせたデザイン性の高いものを取り付けるという場合もあります。
(安全面では、額縁の紐は長くせずにきちんと張った状態にする方がおすすめです)
石膏ボードにフックを取り付けるポイント
石膏ボードは強度面での不安があるという弱点がわかりました。
ここからはその弱点を踏まえた上で、安全にフックを取り付けるためのポイントをお話しします。
空洞部分ではなく、桟が入っているところにピンを打ちこむ
一般的に石膏ボード壁というのは、厚さ1cmくらいの石膏ボードを、約45cm間隔くらいに立てた桟(胴縁)に取り付けることでできています。
石膏ボードのみの空洞部分ではなく、桟が入っているところにピンを打ち込むことができれば、しっかりフックが壁に固定され、ピンが抜けてくるのを防ぐことができます。
桟がどこに入っているかは、手で叩いたときの音や感触などでもある程度判断できますが、シンワ測定さんという「はかるもの」専門のメーカーさんから「下地センサー(チェッカー)」という石膏ボードの裏側に桟があるか調べるための便利な道具も販売されていますよ。
さらに、ここで問題となってくるのは桟の素材です。
角材かLGSが一般的なのですが、LGSの場合ピンは入りませんので専用ネジ(軽天ビス)を使う必要があります。
桟が角材だったらそのまま石膏ボード用のフックを取り付け可能です!
中空壁用プラグや中空壁専用フックを使う
「中空壁」チュウクウヘキと読みます。
これは、桟が入っていない空洞部分の壁のことです。

飾りたい場所にうまく角材の桟が入っている確率ってどのくらいあるんだろうか・・・

そうだよね、なかなかそんなにうまくいかない気がするよね
そんなときは中空壁用のプラグやフックが販売されていますので、それを使いましょう。
こちらの商品のように、フックと中空壁用のプラグがセットになっているものがおすすめです。
福井金属工芸さんというメーカーさんの商品なのですが、このメーカーさんは商品バリエーションがとにかく豊富。
同じ形のフックや額用吊り金具でも鉄製・ステンレス製と材質を選ぶことができるのが魅力です。
以前働いていた額縁店で扱っていた金具メーカーさんで、たくさん使ってきたからこそ商品の品質を信頼しています。
小売販売はされていませんが、額縁や画材の専門店なら扱っているお店が多いメーカーさんです。

石膏ボードの壁に絵を飾るとき知っておいて欲しい大切なことはこれで全部だよ!

石膏ボードは強くないって弱点はあるけど、それをカバーする商品がたくさん販売されているので心強いよね!
信頼できる商品を選んで安全第一で絵を取り付けてくださいね
まとめ
石膏ボードの壁に絵画を安全に取り付けるため、大切なことやアイテムについてお話ししてきました。
もう一度簡単におさらいします。
- 壁の材質が何なのか、飾る額縁(絵画)の重さはどのくらいあるのかを確認することから始める
- フックは石膏ボード壁の特性が考慮された商品を選ぶ
(石膏ボードの弱点が考慮されたフックがあります) - 石膏ボード壁の弱点を理解しておくことが大切
(石膏ボードは脆いものだということを知っておけばできる対策があります) - 石膏ボード壁の弱点をカバーするフックの取り付け方
(空洞部分などピンが効いていない場合は石膏ボード用プラグや中空壁専用フックを検討してください)
今回は、前回までの「インテリアをおしゃれにする方法」シリーズからの実技編として、実際に石膏ボードの壁に絵画を飾るためのポイントやアイテムをご紹介しました。
石膏ボード壁はコンクリート壁に比べて強い素材ではありませんが、コンクリート壁ほどとっつきにくいものでもありません。
あらかじめ石膏ボードの弱点を知っておけば、絵画を取り付けるとき適切な場所やフックを選ぶことができます。
それに弱点をカバーするフックもたくさん販売されています。
石膏ボードは強くないということを押さえて、ぜひあなたのお部屋を安全かつ、すてきに飾ってくださいね!

壁をすてきにデコレーションしたらお家がもっと居心地のいいお城になること間違いなし!
ステイホームがこれまで以上に求められるこんな時期だからこそ、お家で過ごす時間が楽しくて優しいものになりますように。
次回はこの記事の番外編として、軽い絵(額縁)限定で壁を傷つけずに絵を飾る方法をお話しします。
邪道でも使えるアイテムばかりを厳選したのでよかったらのぞきにいらしてくださいね!

次も楽しく読んでいただける記事になるよう頑張ります、ぬん!
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