海外で買った絵の飾り方 #3【海外で買った絵を張り込むには】


こんにちは、カギ尻尾です。

今回は「海外で購入した布(画布)に描かれている絵画を張り込む」ことについてお話しをします。

〈作品例〉アフリカのティンガティンガ・バリ島のバリアート・オーストラリアのアートなど。
前回記事、【絵を安全に保管する方法】では、これらの絵画の性質や保管方法について詳しくお話ししました。

続編となる今回は、より実践的な、
「そもそも絵を張り込むってどういうこと?」
「張り込む基材は木枠、木製パネルどっち?」
「張り込みに種類がある?」ということまでスポットを当てていきます。

情報が少ない分野なので、疑問だらけで当然です。
この記事では、あなたがいざ額装しようと額縁店へ絵を持ち込んだとき、ご自身に合った選択をスムーズにできるような情報をまとめました。

まず最初の疑問、「絵を木枠に張り込むってどういうこと?」から。

上記の絵画は、現地で木枠に白い布(画布)を張ったキャンバス の状態で描かれることがほとんどです。
ですが多くの場合、私たちが買うときに、木枠からはずされて布の状態で渡されることになります。
理由は、そのままでは飛行機で持ち帰るのに不便だということ。
それと、張ったままの状態では何らかの負荷がかかったとき絵を傷めてしまうことになるからです。

このため、お部屋の壁に飾るとき、絵(画布)を再度木枠に張り直すことになります。
この、「木枠に張り直す」作業こそが「絵を張り込む」ということです。

そのとき、額縁店もしくは額縁を扱っている画材店に絵を持ち込んだら、まず、寸法に合わせた木枠を作る。
出来上がった木枠に、額装担当の店員さんが絵の余白部分を引っ張りながら、手作業でタックスもしくはガンタッカーで絵を固定する。=絵を張り込む
という一連の作業をします。

作業をするのはお店の人ですが、持ち主のあなたが張り込む基盤となる材や張り込むスタイル(種類)を選ぶことになります。

絵はそれぞれ性質やコンディションによってベストな選択肢が変わりますが、ある程度スタンダードな張り込み方がありますので、最初にご紹介します。

画布を張り込む基材」は基本「木枠」
張り込む種類」は木枠の側面にタックスを打ち込む「側面張り」
(この作業の後、額縁にいれるのが基本のスタイル)
もし、絵を額縁に入れずに飾りたい場合は、作品を衝撃から守る目的で「木製パネル」に張り込むのもありです。

このときは、パネルの裏側にガンタッカーを撃ち込む「裏張り」と呼ばれるスタイルで絵を張り込むのがいいと思います。

15年間、額装の仕事をしてきた私は、慣れない選択に何を選んだらいいかわからないお客様も少なくないことを知りました。
今回の記事がそういう方たちのお役に立てばいいなと思っています。

海外で買った絵を張り込むには

張り込む材の選択[張り込むのは木枠か木製パネルの二択]

絵(画布)を張り込むための基盤材として使うのは木枠木製パネルのどちらかです。
2つの違いを知った上でどちらにするか選びましょう。

木枠:画布(キャンバス)を張るために作られたもの

木枠は、クギを使わず木でできた棒の端と端を差し込んで四角に組み立てられるように作られた枠です。

張り込みに木枠を使うメリット

・画布が破れにくい作りである
画布があたるへり部分に角がなく、滑らかに仕上げてあるので布への負担が少ないです。

画布が木枠(木材)に接触する箇所を極力少なくする作りである
棒の1本1本に傾斜がつけられているので平らではなく、画布がピンと張れたときは絵が木に触れる部分はヘリ部分の数ミリ幅のみですみます。

張り込みに木枠を使うデメリット

・額に入れないで飾る場合は埃や汚れの影響を受けやすい
枠がない部分は絵の裏側にも埃がたまりやすいです。
でも、額に入れて蓋をすればこのデメリットはなくなります。

・額に入れないで飾る場合は衝撃に弱い
枠がない部分は裏側が空洞でむき出しになるので、ぶつかったときには絵がたわんだり、破れたりしやすいです。
でもこちらの問題も額に入れて蓋をすれば解決します。

木製パネル:日本画や水彩画を描くときに紙を貼るために作られたもの

シナベニヤに脚(角材)がついた厚みのある板(パネル)です。

張り込みに木製パネルを使うメリット

・裏側がベニヤで蓋されるので、額に入れない場合は絵が破損する心配を軽減できる
ベニヤで蓋がされているので裏側がむき出しになる部分がなく、額装しないで飾る場合は衝撃対策面で良いといえます。

張り込みに木製パネルを使うデメリット

・画布への負担が大きい、弱い画布だと破れることも
紙を貼るために作られているので、へりが直角な(鋭い)ことが布には負担になります。
裏技として軽くやすりをかけて角をとる方法があります

・作品が木材に面で触れていることが、将来的に絵を変色させる心配がある
私は実際にそうなった絵を見たことはありませんが、シナベニヤ(木)に含まれているアクが後々、絵にシミを作るかもしれないと言われています。
どちらにしても、裏面とはいえ絵がぴったり木材に触れ続けるのは歓迎することではないので、用心するに越したことはないと思っています。
裏技としてパネルに無酸の薄い紙マットを貼って、その上に絵を張り込む方法があります

張り込むスタイルの選択[張り込む方法は側面張りか裏張りの二択]

木枠か木製パネルを選んだら次は絵を張り込むスタイルを選びます。

側面張り:絵を木枠の側面で固定する

木枠の側面にタックスかガンタッカーで絵(画布の余白部分)を固定して張り込むスタイルです。

側面張りのメリット

・しっかり張れるのでたわみが出にくい
通常のキャンバス は側面張りになります。
昔からある一般的なスタイルなだけに、絵をしっかり伸ばして張りやすいのでたわみが出にくいです。

側面張りのデメリット

・見た目の美しさが損なわれる
これは好みの問題だと思うのですが、額に入れないで飾る場合は側面にタックスやガンタッカーが見えないほうがきれいだと感じる方が多いです。

裏張り:絵を側面ではなく裏側で固定する

裏張りは側面には何も留めず、裏側の見えないところにガンタッカーで固定するスタイルです。

裏張りのメリット

・見た目の美しさがある
お好みですが、額に入れないで飾る場合は側面にタックスやガンタッカーがないほうがすっきり見えるので、こちらを選択する方が多いです。

裏張りのデメリット

・高い技術力が必要
作品に合わせた適切な力加減で張り、さらにバランスよく固定しないとたわみやシワが出やすいので張り込む人の経験が必要です。

・金額が高くなることが多い
側面張りよりも手間がかかるので金額を高く設定している店が多いです。

・作品の余白が多めに必要
巻き込んで張り込む方法のため、絵の余白が少ないと裏張りできません
木枠や木製パネルの厚みプラス2cmは余白があったほうがいいので、大きさにもよりますが目安として5cmくらいの余白が必要です。

絵の固定に何を使うかを選択[タックスかガンタッカーの二択]

絵を留めるのはタックスガンタッカーのどちらにするか選びます。

タックス:キャンバス を木枠に固定する専用のクギ

タックスのメリット

・固定力がある
強いので重さのある大きな絵(画布)もしっかり固定できます。

タックスを使わないほうがいい作品

・繊細な状態の絵には不向き
タックスは金槌で叩いて入れるので、絵に強い振動を与えてしまうことになります
絵の具が割れたり剥がれたりしやすい作品や、すでにダメージがある作品にはタックスを使わないほうがいいです。

・余白に直径2mm程度のタックス穴があくのが嫌な場合
針状のガンタッカーと比べると穴が大きくなるので、再度張り替える必要ができたとき画布に負担がかかります。

・画布が薄い作品には不向き
薄くて繊細な画布に使うとタックスの力で裂けることがあるため使わないほうがいいです。

・裏張りにはおすすめしにくい
作品の裏側から金槌でタックスを打ち込むと、振動や衝撃から絵にダメージを与える可能性があるので絵の具の状態によっては使いません。

ガンタッカー:木工や建築現場などで使うホビーホッチキスの強い版

ガンタッカーのメリット

・作品に衝撃を与えにくい
タックスと違って金槌で打ち込まないので、振動が少なくてすみます

・薄い画布にも使いやすい
ガンタッカーは針で張り込むので、画布にタックスほどの負担がかかりません
また、作品によっては数多く針を打ち込むこともできるので、例えるならミシンで縫っているような感覚(?)で安全にしっかりと固定することもできます
ただ、極度に乾燥してぱりぱりの状態になった画布だとガンタッカーでも入れた瞬間破れることあるので注意は必要です。

・裏張りに向いている
作品の裏側から打ち込む裏張りの場合、金槌で叩かなくても固定できるガンタッカーは、絵に与える衝撃が少なくてすみます。

ガンタッカーを使わないほうがいい作品

・大きくて重い作品や画布が厚い作品は固定力に不安がある
ガンタッカーはホッチキスの針のようなもので固定しますが、一つ一つの針の固定力はそれほど強くないため、大きくて重い作品や画布が厚い作品にはガンタッカーを撃つ回数を増やして細かく留めないとゆるみが出ることがあります。

絵の種類別おすすめ[どんな張り込みを選択するのがいいか]

絵は一点一点違うので、どんな張り込みにするかの最終判断はそれぞれの絵に合わせてするのがいいのはもちろんですが、
これまでアフリカのティンガティンガ、バリ島のバリアート、オーストラリアのアボリジナルアートを張り込んだとき、作品の性質から選ばれることが多かった張り込み方法をまとめました。

この3種類の絵画の性質は、前回の記事【絵を安全に保管する方法】にまとめてありますので見てみてください。

ティンガティンガ(Tingatinga)

木枠/側面張り/タックス

ティンガティンガは絵の具が割れやすいので、作品保護に重点を置いて額装する前提で、木枠を選択。

重さがあり、画布も厚手の作品が多いので、タックスを選択。

絵の具が非常に繊細なので裏張りより側面張りが適していることが多いです。

バリ島アート(Bali Art)

木枠・木製パネル/側面張り・裏張り/ガンタッカー

絵の具が薄塗りで比較的強いので、余白が充分あれば側面張り・裏張りどちらもいけます。
額に入れるなら木枠側面張り

額に入れないなら裏張りを選択。
裏張りを選択したら、人や物がぶつかったときに絵を守る目的で木製パネルを選ぶのもあり。

画布が薄くて弱いことが多いのでガンタッカーが適していることが多いです。

アボリジナルアート(Aboriginal Art)

木枠/側面張り/タックス・ガンタッカー

ティンガティンガほどではないですが、絵の具に亀裂が入りやすいので作品保護の観点から額装する前提で木枠を選択。

上記の理由から少ない振動で張り込みたいので側面張り

画布はしっかりしている作品が多いので、絵の具の状態が良ければタックスでしっかり固定。
絵の具が既に割れていたりダメージがある場合、またはダメージが出そうな場合にはガンタッカーを選択します。

アボリジナルアートはモダンな雰囲気の絵が多いので、額装せずシンプルに飾りたい方も多いです。
その場合は裏張りを選択したほうがすっきり見えますが、絵の具の状態が良くない場合は難しいこともあります。

まとめ

今回は海外で買った布(画布)に描かれた絵を張り直すときのことに焦点を当ててお話ししました。
まずは、額に入れるか入れないかで大体の選択は決まってきます

ざっくり言ってしまえば、

額に入れるなら、木枠に側面張りして、
絵の具や画布が強いならタックスを使う。
繊細そうならガンタッカー。

額に入れないなら、絵の状態が良ければ裏張り。
木枠か木製パネルかは、人や物が絵にぶつかったりしたときの保護を優先するなら木製パネル、その心配がないなら木枠でもいい。
裏張りなら基本はタックスではなくガンタッカーを使う。
という感じです。

とは言え、やはり手描きの絵画は一点一点違います。

絵の状態を慎重に観察してから最終判断をしてください。
もちろん、お店で額装のプロに相談して決めるのもいいと思います。

あなたの旅の思い出が詰まった絵を最高の状態で素敵なインテリアにできますように!

次は、一人暮らしの方にもおすすめな絵画のある暮らしをテーマにお話ししたいと思っています。
次回も見ていただけるような記事を作れるように頑張ります。ぬん!

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