【額縁に絵が入らない時の解決策】規格キャンバスなのにきつい!


Photo by iMattSmart on Unsplash 


こんにちは、カギ尻尾です。

今回は、キャンバスや木製パネルなど厚みのある絵を額縁に入れるとき、おきると困る「問題」の解決策をご紹介します!

どんな問題かというと。

問題その1:
「規格サイズなのにきつくて絵が額縁に入らない」もしくは「ゆるくて隙間が見えちゃう」など、『大きさの問題』

問題その2:
「絵が厚すぎて裏板(ふた)がしまらない」もしくは「厚みが余りすぎてガタガタしている」など、『厚みの問題』

これらの問題のうち、『大きさの問題』にスポットを当てていきたいと思います。
今回はその中でも、特に困る「規格サイズなのにきつくて絵が額縁に入らない」ときの解決策に絞ってご紹介していきます!
(逆に、ゆるくて隙間が見える・落ちるなどでお困りの場合は「額縁に隙間が見えるときの解決策」の記事をご覧くださいね)

いざ、完成した絵を額縁に入れようとしたとき、なぜかうまく入らない…という状況は本当に困ります。

そもそも、そんな状況に遭遇したら「規格サイズを買ったのに、そんなことってある?」って思っちゃいますよね。
でも額縁店で働いていると、こういうことってちょいちょいあるんです。

その理由はいろいろありますが、意外と盲点なのは「キャンバスも木製パネルも額縁もみんな木で作られている」ってことによる不具合です。
木なので、保管環境の湿度・温度の変化、木材自体が加工されたときのコンディションなどで、反る・膨らむ・縮むなどが起こることがあります。
そのことを木工職人さんは「木が暴れる」なんて表現をしますよ。

特に額縁は、海外で作られて船便🚢で日本に運ばれお店に並ぶことも少なくないので、より環境の変化を受けやすいんです。

15年間、作品を額縁にいれる額装の仕事をしていた私
実際に、作品がうまく額縁に入らない状況に遭遇したことは数え切れないほどです
そこで今日は、実際に私がよく使っていた「絵が額縁に入らないときの解決策」をまとめてみました

今回は、
絵も額も「規格サイズなのにきつくて額縁に入らないというときにお家でもできる解決策を中心にご紹介していきます!

(✈ちなみに海外で購入した絵でも、多少の誤差ならうまく入ることがあるのでよかったら試してみてください✈)

額縁にうまく絵が入らない状況とは


日本で販売されているキャンバスや木製パネルなどは、『規格サイズ』が決まっています(詳しくは「額縁の規格サイズ」の記事をご覧ください)。
そして額縁は、日本規格サイズの作品がぴったり収まるように作られています。

ちゃんと既製品を買ったのに、作品が額縁の内寸法よりも少し大きくて入らないことや、
逆に、作品が小さくて隙間が見えていたり落ちてしまったりすることもあります。
どちらも、絵(作品)もしくは額縁の「縦横の長さが問題でうまく額装できない」という状況です。

ところで、海外で購入した絵(キャンバス)の場合はどうかと言うと、
日本と全く同じ規格サイズを使っている国はないので、ほぼ全てが日本では「特別サイズ(特寸)」ということになります。
つまり、日本の既製額縁に入れてもぴったり入るということはかなり少ないです。

なので、お持ちの絵の縦横の長さが、日本規格で近いサイズと『15㎜以上』の差があるなら、特別サイズとして額縁をオーダーするのがおすすめです。

もしこの状況で既成の額縁を使いたい場合は、マット台紙を入れる加工額装や、規格の木枠に張り替えてしまうなど方法はあります。
(そのあたりのことはよかったら「海外で買った絵の飾り方」という記事をご覧くださいね)

でも基本的には、特別サイズとしてオーダ専用額縁の「モールディング」で額装するのが最善策だと思います。

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どうして既製の額縁より特別サイズでオーダーする方がいいの?
額縁の値段が高くなっちゃうでしょ?

それは、額縁の大きさに作品を合わせるんじゃなくて、作品に額を合わせられるからだよ
確かに特別サイズで作ると、どうしても既製額縁に比べて高くなりやすいんだけど、
作品に負担がかからないし、バランスを崩さずきれいに額装できるよ!

そうかぁ。。。
既製額縁に規格サイズじゃない作品を合わせたら、縦横のバランスが違っちゃうもんね。

うん。
それにオーダ専用額縁の「モールディング」って、デザインの選択肢がすっごく多いことも魅力だよ!
納期もそれほどかからないことが多いから(1週間くらい)、早く飾りたい人にもおすすめなんだ。


海外で買ったキャンバス(絵)が日本の規格サイズに合うか確認したい方は、「額縁の規格サイズ」の記事をご覧ください。

もし海外で買った絵でも、縦横の長さが日本規格と『10㎜以内の誤差』なら、既製品の額縁を使える検討の余地がじゅうぶんにあるので、まずはこれからご紹介する方法を試していただけたらと思います。(もちろん額縁店に持ち込んで相談するのもありですよ)

厚みのある額縁の構造

上の画像からもわかるように、額縁は、キャンバスや木製パネルがすんなり入るように少し「のび」をみて作られています。

つまり額縁の内寸法は余裕をもって、規格サイズから数ミリ大きく作られているんです。

のびには「規格サイズ+○mm」という決まりはないので、メーカーによっても違うし個体によっても若干の差があります。
また冒頭でお話ししたように、環境の影響を受けて製作時の寸法から変化してしまうことも。

そんなこんなで、通常なら余裕で入るはずの絵がなぜかきつくて入らない時、どうしたらいいのか具体的な解決策をご紹介していきます。

絵がきつくて額縁に入らない時の解決策


絵がきついときに「グッと押し込めば入りそう」と思ったりもしますが、それはやめた方がいいです。
無理やり入れると、木枠に負荷がかかり画布がたるんだり絵の具にひびが入る可能性があります!


この状況って「規格サイズだから」という気持ちもあるし、焦りから、ついつい荒療治しちゃいたくなりますよね。

とりわけ荒目のキャンバスはきつくなりがちです。
画布が厚い分どうしても窮屈になっちゃうんですね。ここに反りなど何かしらの要因が加わると「入らない💦」ってなります。

でも、大丈夫です!
額縁店で働いていると、この状況ってわりと頻繁にあります。
でもこれからご紹介する方法で、ほとんど場合が「すとん」と入るようになりますよ!

海外の絵でも、日本規格と『10mm以内の誤差』なら試してみる価値大です。

1.作品と額縁のサイズを確認する

単純すぎて忘れがちですが大切なことです。
落ち着いて、もう一度サイズを確認してみてください。

通常だったら作品を額縁に入れるのに力は全く必要なく、すとんと入るはずです。
それができないということは、単純に額縁のサイズを間違えて購入してしまった可能性や商品不良なども考えられます。


A.「まず作品のサイズと額縁のサイズを確認してみましょう

サイズを簡単に確認するとき、まず見るのはこちらです

キャンバスのサイズは通常、木枠の裏面に印字してあります。

木製パネルは、木枠の側面に印字してあることが多いです。日本画などで紙が貼ってあり見えない場合は定規で測ってください。

額縁のサイズは、に明記してあります。


確認ポイント1「F/P/Mを間違えていませんか?」
《例》F6号のキャンバスなのに、P6号の額縁だった。

確認ポイント2「号数は合っていますか?」
《例》F号のキャンバスなのに、F号の額縁だった。


確認ポイント3「 A/Bサイズではありませんか?
《例》B4の木製パネルなのに、F4号の額縁だった。

これで間違いなかったら商品不良の可能性も出てくるよ

B.「定規を使って実際の寸法を確認しましょう

今度は、定規で額縁の内寸法を実際に測ってください。

確認ポイント「額縁の内寸は規格サイズより数mm大きくなっていますか?」
《例》F6号なら規格サイズは「410×318mm」、額縁の内寸法は通常5mm程度のびをみて作られているはずなので、「415×323mm」くらいあります。

額縁の内寸法は規格サイズより少し大きくなくてはだめ、ぴったりでは入りません

もし規格サイズより額縁の内寸法が小さかったりぴったりの場合は、額縁の商品不良ということになります。
購入したお店に相談して交換してもらいましょう。

それも問題なかった場合は、作品(キャンバス)の方に解決の糸口がありそうだよ

2.タックスが浮いていないか確認する


タックス」とは、画布(キャンバス)を木枠にとめているのことです。

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「あり得ない」と思うかもしれませんが、実際に結構多いのがこのケースなんです。

タックスの長さはメーカーによって違いますが、だいたい10〜15mm程度が一般的、けっこう長いんですよね。

私も自分用にキャンバスを張るときは「適当にトントンって入れて完成」で、後から「タックスの頭が飛び出ている」って気付くことがあります。

A.「キャンバスの側面を確認しましょう

確認ポイント「浮いているタックスはありませんか?」
キャンバスの側面を確認して、浮いているタックスがないかを確認します。

浮いているタックスがあれば金槌で入れてください。
このとき、なるべく衝撃が絵にいかないように優しく打ち込むことが大切です。


浮いているタックスがない場合には、次を試してみてね

3.タックスの位置を変える


実際にいちばん多く解決してきた方法がこれです。

この方法は、海外で購入した絵にも使うことがあります。

例えば「バリ」の絵です。
バリの伝統的な絵画は、日本の規格サイズと同じではありません。
でもすぐに「特注オーダー」と割り切れないくらいサイズが近くて、「もうちょっとなのに」って思うことがよくあります。

そもそもバリの絵は木枠が歪んでいるのは珍しくなく正確に測るのは難しいところですが、規格サイズより10mm程度大きいくらいなら試してみる価値はありますよ。(バリの絵は釘が飛び出ていることもよくあります)

A.「タックスの位置を確認してみましょう

確認ポイント「キャンバスの端、画布が重なっているのは同じ辺ではないですか?」
通常は同じ辺なので、これはごく普通の状態です。

市販のキャンバスは、画布(キャンバス)を折り込む位置が同じ辺になるように張られています。
左右両端が同じようにタックスで固定されているはずです。
つまり、画布を折り込んでタックスで固定している辺の左右の端は画像のようになっています。
左右の端は同じです


画布を折り込んでいない辺の左右の端は下の画像のようになっています。

こちらも、左右の端は同じです。

画布が折り込まれて2重になっているのが長辺なら長辺だけ。短辺なら短辺だけです。

そしてそのせいで、画布が重なっている厚み分だけ、実際の寸法が少しずつ大きくなっています

きつくて入らないときは、これをあえて変えることで解決することがよくありますよ!


B.「タックスの位置を変えて、画布(キャンバス)が重なる箇所を分散しましょう

ポイント:「端のタックスを交互に抜き、画布のとめ方を変えて打ち直します

画布が重なる位置を交互にすることで、実際の寸法が大きくなってしまうのを防ぐ方法です。


1. ニッパーかキャンバス釘抜き(通称タビ)を使って、画布が折り込まれて重なっている部分のタックスをひとつ抜きます。

下の写真が「キャンバス釘抜き」通称・タビです。
慣れたら便利な工具ですが、どちらかと言うとニッパーの方が汎用性が高く、どなたでも使いやすい工具だと思います。

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2. タックスを抜いた部分を、今度は画布を重ねないでタックスを打ち直します。
このとき、表面にシワができないように画布を手で張りながら固定するのが大切です。


タックスを打ち直すときは、同じ穴を使うと抜けやすくなるので少しずらしてください。
*金槌でタックスを打ち込むとき、なるべく絵に振動がいかないように優しく打ってください。

3. 同じ辺の他のタックスはそのままです(同じ辺ではこれ以上抜いたり打ったりしません)。

4. キャンバスを時計回りに回転して次の辺にいきます先程打ち直した隣りのタックスをひとつ抜きます。


5.抜いた部分を、今度は画布を重ねて折り込んでタックスを打ち直します。
2と同様、表面にシワができないように画布を手で張りながら固定するのが大切です。

同じ辺の他のタックスはそのままです。

(この作業をキャンバスのぐるり一周やり、画布が折り込まれて二重に重なる箇所が交互になるように張り替えていきます。)

6. キャンバスを時計回りに回転して次の辺です。
画布が折り込まれて重なっている左端のタックスを抜きます。(画布が折り込まれるのは交互になるようにします

7. 抜いた部分を今度は画布を重ねないで打ち直します

8. 時計回りに回転して次の辺へいき、7で打ち直した隣のタックスを抜きます

9. 今度は画布を重ねて折り込みタックスを打ち直したら完成です。

画布が折り込まれて重なっている部分を交互にしたことで、作品の実寸法が少しずつ大きくなってしまっている状況が改善されました。

作品と額縁の両方が日本の規格サイズであれば、これまでご紹介した方法で解決できます。
ここまで試して入らない場合は、サイズを間違えているか商品不良、もしくは絵が日本の規格サイズではないかのどれかだと思います。

4.お店に作品と額縁を持って行き相談する


1〜3までにご紹介した解決策を試しても作品が額縁に入らない場合は、額縁と作品を額縁店に持って行き相談してみてください。

その際、できれば額縁を購入したお店に持っていくのがおすすめです。
不良品の場合はもちろんですが、購入した側のサイズ間違いだったとしても返品交換してもらえる可能性があります。

ポイント:「額縁を特別サイズ(特寸)でオーダーするときは、作品の詳細な寸法が必要です
作品に合わせて額縁を作ったらいくらになるか、金額の見積もりをしてもらうには、作品の詳細な寸法が必要です。
自分で測ってもいいのですが、お店で測ってもらうほうが安心だしラクだと思います。

既製品の額縁を特別サイズでオーダーすることもありますが、出来上がりに時間がかかることが多いので「モールディング」で作るのがおすすめです。

額縁店には大抵、モールディングのコーナーサンプルが置いてあります。
その中からイメージに合いそうなものをいくつか選んで、金額を計算してもらいましょう。

額縁店で相談すれば、特別サイズでオーダーする以外にも加工額装など、希望に応じて最善の方法を提案してもらえるよ!
そのあたりのことは、
「海外で買った絵の飾り方#1」
「海外で買った絵の飾り方#3」の記事でお話しているのでよかったらご覧くださいね。

まとめ

今回は、規格サイズなのに絵(キャンバス・木製パネルなど厚みのある作品)がきつくてうまく額縁に入らないときの解決策をご紹介しました。

ざっとまとめるとこんな感じです。

1.サイズを間違えていないか、作品と額縁のサイズを確認します。


2.タックスが浮いていないか確認する。


3.タックスの位置を変える。


4.額縁店で相談する。

1〜3でご紹介した方法を試しても解決しなかった方は、
日本の規格サイズについてまとめた記事「額縁の規格サイズ」で、作品の寸法を確認してみてくださいね。

今回ご紹介した解決策は実際に額縁店で使われる方法ですが、やり方さえわかればお家でもできると思います。
「すぐになんとかしたい」とき、ぜひ試してみてくださいね。
そして「解決したー!」と喜んでくださる方がいらしたらとても嬉しいです。

次回は今回とは逆の問題、
木製パネルやキャンバスボードなどの作品を額縁に入れた時、ゆるくて隙間が見える・落ちてしまうときに使える解決策をご紹介します!

額装の問題が解決する記事になるよう頑張ります、ぬん!


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