こんにちは、カギ尻尾です。
前回の記事【海外で買った絵を飾る方法は大きく分けて2つ】に引き続き、海外の布に描かれた絵についてお話しします。
対象となる絵画はこちら。
- アフリカのティンガティンガ
- バリ島のバリアート
- オーストラリアのアボリジナルアート
今回は、この3種類の絵画にしぼって、それぞれの特徴をふまえた上で保管するとき、気を付けるべきポイントをお伝えしたいと思います。
今回の記事は紙に描かれた作品(水彩画・版画・ポスターなど)には関係ない内容になります。
さて、あなたは海外で買った絵を帰国後どのように保管していますか?
布に描かれた絵は、ラップの芯のようなものにくるくる巻いて保存している方が多いのではないでしょうか。
なぜなら、購入したときにその状態で渡されることが多いからです。
でも、実は巻いて保管するのはおすすめできません。
理由は、絵を巻くことで絵の具が割れるなど絵を傷めるリスクが上がってしまうからです。
本当は、箱に入れるなどして平らに保管するのがおすすめです。
15年間、額装の仕事をしてきた私は、巻かれた癖に沿って絵の具に亀裂が入ってしまった作品を何度か見たことがあります。
大きい作品は、持ち運ぶためにも保管するにも巻くことになってしまうと思いますが、巻くときにひと手間かけることでダメージを最小限にすることができます。
せっかくの絵をできるだけ良い状態で飾れるように、参考にしていただけたら嬉しいです。
なお、今回は短期(2ヶ月くらい)保管についての内容となっています。
海外から持って帰るときや、額縁店へ持ち込むことを考慮して絵画を衝撃から守ることを優先した保管方法です。
海外で買った絵を安全に保管する方法
どんな絵も巻かないで平面で保管した方がいいのですが、大きな作品ではそうもいきません。
絵の性質に合わせてできるだけ最高の状態で保管することで、額装したときもきれいに仕上がります。
それでは、詳しく見ていきましょう。
ティンガティンガ(Tingatinga)
艶やかでカラフルな色彩が特徴のパワーあふれるアフリカ・タンザニア発祥の絵画です。
アフリカならではの野生動物や植物がにぎやかに描かれています。
性質:絵に亀裂が入りやすい・重さがある
今回あげる3種類の中で一番扱いに気を付けなければならないのが、ティンガティンガです。
ティンガティンガはほとんどがエナメルペンキを使って描かれていて、厳密には絵の具ではないので絵に亀裂が入りやすいです。
そんなデリケートなティンガティンガは、木枠に張った状態だけで飾るよりも、額縁に入れるなどして表面を保護してあげることをおすすめします。
ティンガティンガの保管方法を知っておけば、他の作品は安全に保管することができるようになります。
保管:箱に入れて動かないように絵を固定・巻くときはキツく巻かず大きく巻く・振動に注意
元気な印象とは裏腹にとても繊細な絵画なので、慎重に扱うようにしてください。
振動で絵がポロッと欠けることがあります。
なるべく巻かない方がいい代表格とも言えるのですが、ダイナミックに大きなサイズで描かれることが多く、巻かざる得ないことがあります。
箱に入れて保管することが望ましいですが、それができない大きさの場合には下記のポイントを抑えた上で巻いて保管してください。
箱に入れて保管する方法
中でくしゃくしゃにならないように、絵をかるく伸ばしながら余白を額装用の無酸テープで箱に固定。
その後、蓋をかぶせて湿気のこもらない場所で平らに保管します。
絵の表面には何も触れていない状態です。
使う箱は「作品保存箱」という専用のものが用意できれば最高です。
この箱は、紙でおなじみのメーカー「ミューズ」さんの商品。
中性の段ボール紙でできていて、箱内に入り込む外気や絵自体から発生する酸性物質を中和して、絵を酸性劣化から守ってくれます。
画像の保存箱はMサイズです、他にSとLがありますよ。
サイズごとの箱内寸法はこちら。
- S:366×467×50mm
- M:515×617×50mm
- L:667×820×50mm
どのサイズの箱も、箱内の湿度変化を緩和する「調湿紙」が入っています。
日本の夏はかなり湿度が高くなるので、こんな箱で絵画を保存できればベストです!
作品を箱内に固定する際におすすめのテープはこちらです。
箱と同じように、中性紙に無酸性の(アシッドフリー)糊を使っているので、固定した部分の酸性劣化を防いでくれます。
つまり、セロテープなどのように、しばらく経つと薄茶色に変色してテープも固定された側もカピカピになる、というような現象が起こりません。
世界中の額装の現場で使われているテープです。
もし額装用のテープが用意できないときは、余白を押しピンで止めたり、ほんの少しだけ(3mm以内)余白に布ガムテープをとめて固定します。
布ガムテープは絵の余白(布)が変色変質してしまいますので、長期保管する場合は絶対ダメです。
たとえ額装用のテープであっても絵具の上には貼らないでください。
テープを貼っていいのは絵の部分ではなく、あくまで余白部分です。
巻いて保管する方法
絵への負担が少ないように大きく巻きます。
巻き始める前に、作品の絵の具が完全に乾いていることを確認してください。
巻くときに、中心に入れる硬い芯が必要です。
芯は絵を買ったときについてきたものを使いますが、これにひと手間加えることがポイント。
絵への衝撃が少なくなるように、芯にプチプチ(エアーパッキン)をぐるぐる巻きつけて太くて優しい芯を作ります。
このとき、プチプチの凸凹が芯側にくるように、絵の方は平らな面がくるように巻いてください。
ちなみに、私はいつも直径20cm以上のゴン太芯を作って絵を巻いていました。
出来上がった芯に、買ったときついていた紙をそのまま絵の表面にのせた状態で、ふんわりと巻いていきます。
絶対にキツく巻かないようにしてください。
巻けたら、その上からさらにプチプチを巻いてテープでとめたら完成です。
この状態で、平らな場所にそっと置いておきましょう。
プチプチは絵を衝撃から守る上では優秀ですが、通気性が悪いので、長期間に渡る保管にはおすすめできません。
バリ島アート(Bali Art)
熱帯雨林のカラフルな鳥や花、働く人々を描いた抽象・具象が融合したバリ島絵画です。
癒しの効果抜群のバリ島アートは、全体の配色を緑色メインになっていて、この島ならではの植物が描かれています。
性質:絵の具が薄塗りで比較的強い・基盤の布が薄くて弱い・クギ痕が変色して布が弱くなっていることがある
バリアートは厚塗りをしないので絵の表面がそれほどデリケートではなく、絵の具が比較的強いです。
気をつけなければならないのは絵の具ではなく、基盤となっている布の方です。
薄手の布を使うことが多く、もともと張られていたクギ痕がしっかり穴として残り、湿度の関係でクギが錆びたせいで布が変色変質して破れやすくなっているケースがかなりあるからです。
バリアートはサイズが小さい作品も多いため、木枠に張られたまま持って帰ることがあります。
でも、木枠がかなり歪んでいるケースが多く、そのままでは額装できず日本の木枠に張り替えることもしばしばです。
保管:箱に入れて動かないように絵を固定・台紙に挟む・ほとんどのバリアートは巻いても大丈夫
比較的繊細な絵画ではないので、扱いは楽です。
小さければティンガティンガと同様、箱の中に固定してから蓋をして保管します。
また、作品にたわみが出ている場合には、多くのバリアートのように薄塗りで絵の具が盛り上がっていなければ、マット台紙(無酸の厚紙)に挟んで保管するのもおすすめです。(完全に絵の具が乾いていることが条件)
巻く場合もティンガティンガと同じく、芯をある程度の太さにしてからゆるく巻きますが、絵の具に亀裂が入りにくいため、ティンガティンガのときほど太い芯を作らなくても大丈夫です。
アボリジナルアート(Aboriginal Art)
点描画で描かれることが特徴の、オーストラリア先住民の人々発祥の絵画です。
世界的にみても歴史の古い絵画ですが、モダンな印象なのが不思議。
描かれる模様には意味があり、自然崇拝の心や魂が伝わるような絵画です。
性質:絵の具が厚塗りで絵に亀裂が入りやすい
絵の具を厚くポテっとのせた感じで描かれるため、ティンガティンガほどではないのですが、やはり絵の具に亀裂が入りやすいです。
モダンな絵の感じから、額装せずに木枠に張った状態で飾る方も多いのですが、絵の保護という観点からは額に入れることをおすすめします。
保管:箱に入れて動かないように絵を固定・巻くときはキツく巻かずに大きく巻く
振動に気を付けなければならないほど繊細な作品は少ないのですが、やはり絵の具が割れやすいので、ティンガティンガ同様、なるべく箱の中に固定してから蓋をして平らな場所で保管します。
巻く場合もティンガティンガと同じ方法で、芯をある程度の太さにしてからゆるく巻きます。
巻けたらその上からプチプチで覆って保護してください。
保管方法のおさらい
1.基本は箱での平面保管、作品保存専用の箱が絵画を劣化から守ってくれるのでおすすめ
2.箱の中で作品が動かないように、額装用のテープで固定する
3.固定するとき作品を引っ張りながらのばして固定する
4.テープを貼っていいのは余白部分、絵には貼らない
5.ガムテープは作品の布を変質変色させるので長期保管には使わない
6.巻くときは、まず絵の具が乾いていることを確認する
7.キツく巻かない、大きくゆるく巻く
以上のポイントを押さえてあなたの思い出の絵画を大切に保管しましょう。
まとめ
今回は、布に描かれた絵を海外で買ったとき、なるべく傷まないように保管する方法をお話ししました。
絵画は巻くよりも箱に入れるなどして平らに保管するほうがダメージを避けられるためおすすめです。
でも大きさによっては巻くしかない場合もあると思います。
そのときは、今回ご紹介した方法で巻いてみてください。
普通に巻くよりは断然絵が傷みにくいやりかたです。
また、巻いて保管する方法として、衝撃への安全対策を優先したプチプチを使うやり方をご紹介していますが、長い期間そのまま保管するならプチプチは通気性がよくないのでおすすめできません。
でも、短期間なら作品を安全に保管できる方法だと思います。
海外で買った絵は日本に運ばれる時点で、気温・気圧・湿度などの環境変化で絵(絵の具)や基盤の布がデリケートになっています。
できる限り慎重に大切に扱ってください。
今回ご紹介した3種類の絵画は、それぞれに独特の雰囲気があるため、額装して飾るとかっこいいインテリアになります。
あなたの大切な絵が飾る前に破損したりしないように、保管するときや持ち運ぶときの参考になれば嬉しいです。
次回も引き続き、魅力的なこの3種類の絵についてのお話しをしたいと思います。
次回は、木枠や木製パネルに絵を張り込むときのことに焦点をあてた内容です。
次も見ていただけるように記事の執筆頑張ります。ぬん!
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