作品をマットに固定するときのテープの貼り方と手順

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こんにちは、カギ尻尾です。

以前の記事で、大切な写真や作品を劣化させずに額装するために選ぶべきテープについてご紹介しました。
では、その“正しいテープ”を実際にどう使えばいいのか?
これは意外と悩ましいポイントではないでしょうか。

今回は、紙の作品をマットに固定する際のテープの貼り方と手順について、基本から丁寧にお伝えしていきます。

15年間、作品を額縁にいれる額装の仕事をしていた私カギ尻尾
今回はテープの貼る位置・注意すべきこと・作品を傷めないためのポイントなど、失敗しないためのコツをまとめましたので、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです!

あなたがもし、テープ選びで迷っていたら、おすすめの額装用テープをまとめた記事をチェックしてみてくださいね!⇩⇩⇩

📙「写真や作品を劣化させない!額装に使うべきおすすめのテープ」

作品をマットに固定するときのテープの貼り方・手順

今回ご紹介するのは、一般的に額縁店でやっている2種類の方法です。
ひとつは、額装用テープを使って作品をマットに直接貼り、固定する」やり方。
もうひとつは、「コーナーシールを使って作品の四隅を固定する」やり方です。
どちらの方法を選ぶかをざっくり言うなら、作品の「保存性」と作品の「見せ方」、どちらを優先するか。あとは作品の大きさと重さです。
「見せ方」優先なら、ズレにくく安定感のある前者の額装テープを使うやり方で、「保存性」優先なら、作品に粘着面が接触しない後者のコーナーシールを使うやり方になります。
作品が大きくて重さがある場合にコーナーシールを使うやり方だと、作品がズレたり落ちたりするリスクが高くなります。
その辺りに関しては、最後の項の「まとめ」で詳しい表にしていますので、よかったらそちらもご確認ください。

どんな方法でもまずは、酸化・劣化を防ぐ素材(中性・無酸性)のテープやコーナーシールを使って固定することが何より大切です。

額装用テープを使って作品をマットに貼り固定する方法と手順

テープは、酸化・劣化を防ぐ素材(中性・無酸性)の額装用テープを使ってください。

画像のテープは私が普段から愛用している「FILMPLAST(フィルムプラスト)P90」です
もちろん無酸で、箱にカッターが付いているので使いやすく、固定力もあるのでおすすめです!

セロハンテープやマスキングテープでは作品を劣化させる原因になりかねません(その理由は、以前の記事に詳しく載せていますので、よかったら参考にしてください)。
もし、作品に直接テープを貼りたくない場合には、次項でご紹介する「コーナーシール」がおすすめです。

特に繊細な作品には、「ヒンジ固定」という保存額装のやり方もあるので専門の額縁店で相談してみてください!

額装用テープを使って作品をマットに直接貼り、固定する」方法と手順
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【1. 作品とマットの位置を合わせる】

清潔な作業台(テーブル)に作品を置いて、窓をあけたマットを合わせてみます。
作品が最もバランス良く見える位置を探します。

【2. テープを用意する】

テープをひとつ3〜5cm程度の長さに、必要枚数カットします。
固定するテープの数は作品によって違いますが、小さい作品なら1枚、大きさや重さによって2枚→3枚→4枚と増やします
作品の負担をなるべく軽減するために、固定する箇所は少ないほうがいい』です。余分にテープを貼るのは作品にとって良いことではありません。

『作品サイズごとのテープを固定する位置と、使用するテープの数の大体の目安』

作品サイズ固定する位置
ポストカード上辺の真ん中 1箇所のみ
A4・上辺の真ん中 1箇所のみ
・上辺の真ん中+左右どちらか1箇所
・上辺の真ん中+左右両方
A3・上辺の真ん中+左右どちらか1箇所
・上辺の真ん中+左右両方
A2・上辺の真ん中+左右両方
・上辺2箇所+左右どちらか1箇所
・上辺2箇所+左右両方
A1以上・上辺の真ん中+左右両方
・上辺2箇所+左右両方

*サイズが同じでも、作品の紙の厚みや状態によって固定する数を増減したり、位置を変えたりします

「ポストカード」くらいの作品なら、作品の『上辺の真ん中を1箇所固定』するだけで充分。
「A4」サイズくらいの作品の場合、軽いものならポストカードと同様で大丈夫。
厚みがある紙で重いものなら、『上辺の真ん中+左右のどちらか1箇所』、もしくは上辺の真ん中+左右両方にテープを貼って固定します。
「A3」サイズくらいの作品なら、『上辺の真ん中+左右のどちらか1箇所』、もしくは『上辺の真ん中+左右両方』。
「A2」サイズくらいの作品なら、『上辺の真ん中+左右両方』、もしくは『上辺2箇所+左右のどちらか1箇所』、もしくは『上辺2箇所+左右両方』。
「A1」サイズ以上の作品なら、『上辺の真ん中+左右両方』、もしくは、『上辺2箇所+左右両方』。

このマットはかなり細いのでわかりにくくてすみません。
小さい作品のため、作品の上辺の真ん中1箇所だけにテープを貼っています。
マットが細すぎるためにマットの外寸(外側)からはみ出しているテープはカッターでカットします。

紙は経年変化するものです。
波打ったり、ゆがんだりするのをなるべく抑えるようにテープ固定すること、そうなったときも作品の見た目ができるだけ変わらず美しく見えるようにすることを考えながらテープを貼る位置を検討します。
基本的に、作品の下部にテープは貼りません。
紙は湿度の変化などによって伸び縮みするので、紙に逃げ場を作るためです。
作品の4辺にぐるりとテープを貼るようなことも絶対にしません。

【3. 作品をマットに固定する】

鉄則は、『固定する箇所は少ないほうがいい!』ということです。
作品の負担をなるべく軽減するために、余分にテープを貼るのはやめましょう。

「作品をマットに固定する手順」
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◻︎作品の裏面、上辺の真ん中にテープを貼ります。

このとき、できるだけ作品に直接テープが貼られる部分を少なくしたいので、作品に接着面が付くのは2~3mm程度で充分です。

20mm幅のテープなら、作品には2mm程度で、残り18mmはマットに貼られている状態になります。

また、薄い作品のときは特に作品にテープが貼られる部分が細く(少なく)なるように注意が必要です。

マットの窓枠より内側までテープを貼ってしまうと、前から見た時にテープが透けて見えてしまいます。

◻︎作品が表を向いた状態(テープの接着面も表を向いている状態)で作業台に置き、マットをかぶせます。
最初はふんわり置いて、ズレていないか位置を最終確認します。
次に、マットを上から軽く押してテープを仮固定します。

◻︎作業台に清潔な紙を下敷きとして置きます。
作品とマットの上下を同時に指で抑えながら、くるりと裏側に返し、先ほど置いた紙の下敷きの上にのせます。
裏側からテープをしっかりと貼ってマットに固定します。
紙の下敷きを置くのは、万一作業台に汚れがあった場合、作品が取り返しのつかないことになるので予防策です。

額縁店では包装紙の裏側の白い面を使って下敷きにしたりもするよ


裏側からテープを固定するとき、作品とマットの段差部分のテープが浮いていないようにヘラや指先でしっかり貼ります。

◻︎必要に応じて左右のテープも貼ります。
再度、表に返して作品がズレてないかチェックした後、裏側に戻します。
作品裏面の左側(サイズによっては左右両方)にテープを貼りますが、上辺のときと同様、なるべくテープが作品に付かないように(2~3mm程度)します。
テープを貼った箇所を作品ごと軽く引っ張りながら、同時に作品の下部も軽く引っ張った状態で、マットに貼り付けます。
作品を軽く引っ張りながらテープ固定するのは、作品が「たわんだ状態」で固定されるのを防ぐためです。

これで作品がマットに固定されました。

【4. 額縁にセットする】
作業台に、「裏板」⇨「マット台紙」または「中性紙」⇨「マットに固定した作品」⇨「ガラス」または「アクリル」 の順番で重ねて置きます。
ゴミなどが入っていないかよく確認してからフレーム(額縁)をかぶせます。
表面が上を向いている状態のまま、作業台から少しずらして、裏側のトンボ金具をスライドし裏板をとめます。

表面が上を向いた状態でフレームをセットするのが綺麗に仕上げるコツだよ!
裏側から入れていくよりゴミが入りにくいんだ🧹


裏に返して、裏板がしっかりとまっていることを確認します。もし、トンボ金具がゆるいようならドライバーでネジをしめて、裏板をしっかりとめます。

最後に表に返して、ガラスなら手垢などをクリーナーで拭いてきれいにし、アクリルの場合はあれば専用の帯電防止剤を塗って仕上げます。

*現在Amazonではアクリル板の帯電防止剤を販売してないようです。(2025年8月時点)

額装用テープをお探しの方は以前の記事でおすすめの商品を紹介していますので、よかったらそちらもご覧ください!
📙「写真や作品を劣化させない!額装に使うべきおすすめのテープ」

作品にテープを貼るとき注意すべきポイント・まとめ

作品にテープを貼るときの注意点をおさらいします

① 酸化・劣化を防ぐ素材(中性・無酸性)の額装用テープを使用する
作品の下部はテープ固定しない(湿度変化による紙の伸縮を許容できるようにするため)、四辺ぐるりテープを貼るのは
テープはできるだけ少なく、最小限にする(作品の負担軽減のため)
繊細な作品にはテープを貼らない(次項のコーナーシールを使う、もしくは「ヒンジ固定」を保存額装専門の額縁店に依頼する)

コーナーシールを使って作品を固定する方法

作品に直接テープを貼りたくないときに便利なのが、コーナーシールを使って作品を固定する方法です。
三角のシールをマットの4箇所に貼り付け、作品の四隅をシールの袋状の部分(ポケット)に収納して固定します。
作品に接着面が触れることがないため、作品を痛めずに取り付け、取り外しができるのが最大の魅力です。
とはいえ作品に触れるものなので、額装用テープ同様、酸化・劣化を防ぐ素材(中性・無酸性)のものを選んでください。

私が愛用しているのは、日本の画材用紙メーカー「ミューズ」の「アートコーナーピタック」という商品です。
もちろん中性紙で、サイズ展開も豊富なので便利でおすすめです!


アートコーナーピタックは以前の記事に詳しく載せていますので、よかったらそちらもご覧ください!
📙「写真や作品を劣化させない!額装に使うべきおすすめのテープ」


「コーナーシールを使って作品を固定する」方法と手順
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1. コーナーシールを用意する

作品の四隅を収納するので、コーナーシールは4枚必要です。

画像引用元:「ミューズ」公式サイト

四角形になっているコーナーシールを中心の点線で半分に折って、三角形の袋を作ります。

2. 作品とマットの位置を合わせる

清潔な作業台(テーブル)に作品を置いて、窓をあけたマットを合わせてみます。
作品が最もバランス良く見える位置を探します。

3.作品をマットに固定する】

◻︎まず作業台に清潔な紙を下敷きとして置きます。
位置を決めた作品とマットの上下を指で抑えながら、くるりと裏側に返し、先ほど置いた下敷きの上にのせます。
紙の下敷きを置くのは、万一作業台に汚れがあった場合、作品が取り返しのつかないことになるので予防策です。

◻︎作品の四隅をマットに鉛筆でごく薄い印をつけます。
印をつけたらいったん作品は離して、安全な場所に置いておきます。

◻︎先ほど印をつけた部分がちょうど収まるように、「上部」のコーナーシールを左右両方マットに貼り付けます。
このとき、鉛筆の印を消しゴムで消しながら、ズレないようにひとつずつ確実に貼っていきます。

◻︎貼り付けたコーナーシールに、作品の「上」の角2箇所を収めます。
コーナーシールの袋状(ポケット)になっている部分に、作品の上部・左右両方の角を収納します。

◻︎「下部」のコーナーシールを左右両方マットに貼り付けます。
上部のときと同様に、印の部分がちょうど収まるようにコーナーシールを貼ります。
鉛筆の印を消しゴムで消しながら、ズレないようにひとつずつ確実に貼っていきます。

◻︎貼り付けたコーナーシールに、作品の「下部」の角2箇所を収めます
下のコーナーシールを貼り付けた時点で、作品の下の角も左右両方収納された状態になっています。

コーナーシールを4箇所いっぺんに貼らないのがコツなんだ✏️
いっぺんに4箇所全部貼ってしまうと、作品をたわませてコーナーシールのポケットに入れ込まなきゃいけなくなるからだよ

作品に無理をさせずにコーナーシールのポケットに収納するためにこの方法でやっているよ
これなら実際に失敗しにくいのでおすすめだよ!
下部のシールを貼るときは粘着面が作品にかからないように充分注意してね👓

これで作品がマットに固定されました。

4.コーナーシールを額装用テープで補強する】

作品に接着面が付かないので、作品を痛めずに取り付け取り外しができるというのが魅力のコーナーシールですが、弱点もあります。
それは、固定力がいまひとつなところ。
作品の大きさや紙の重さによっては、コーナーシールがちぎれてしまうことも。
そこで、下図のように追加で額装用テープで補強します。⇩⇩⇩

画像引用元:「ミューズ」公式サイト

4箇所全てのコーナーシールの上から補強のための額装テープを貼ります。
*作品にテープがつかないように注意してください

5.額縁にセットする】

あとの工程は、額装用テープを直接作品に貼るやり方と同様です。
作業台に、「裏板」⇨「マット台紙」または「中性紙」⇨「マットに固定した作品」⇨「ガラス」または「アクリル」 の順番で重ねて置きます。
ゴミなどが入っていないかよく確認してからフレーム(額縁)をかぶせます。
表面が上を向いている状態のまま、作業台から少しずらして、裏側のトンボ金具をスライドし裏板をとめます。

表面が上を向いた状態でフレームをセットするのが綺麗に仕上げるコツだよ!
裏側から入れていくよりゴミが入りにくいんだ🧹

裏に返して、裏板がしっかりとまっていることを確認します。もし、トンボ金具がゆるいようならドライバーでネジをしめて、裏板をしっかりとめます。
最後に、表に返して、ガラスなら手垢などをクリーナーで拭いてきれいにし、アクリルの場合はあれば専用の帯電防止剤を塗って仕上げます。


コーナーシールをお探しの方は、以前の記事でおすすめの商品をご紹介していますので、よかったらそちらもご覧ください!
📙「写真や作品を劣化させない!額装に使うべきおすすめのテープ」

用意するもの・あると便利なもの

【用意する道具】

・作品に合わせて窓を開けたマット台紙
・額装用テープまたは、コーナーシール+額装用テープ
・テープを切るためのハサミやカッター

【あると便利なもの】

・白手袋
作品やガラスなどに指紋がつくのを防ぐため、特に写真を額装するときは必須。
・マット台紙か中性紙
作品が裏板に直接触れないようにするために入れる。
裏板⇨マット台紙(中性紙)⇨作品を固定したマット の順番。

まとめ

今回は、紙の作品をマットに固定するときの一般的なテープの貼り方2種類と、その手順をご紹介しました!

最後に、それぞれの方法の使い分け・コツ・重要なポイントなどを表にまとめておきます。

項目額装用テープを使って作品をマットに貼る方法コーナーシールで固定する方法
方法の概要作品の裏に額装用テープを貼ってマットに固定する作品の四隅をコーナーシールの袋状の部分(ポケット)に収納して固定する
作品への影響粘着面が作品の裏に直接接触する→ ダメージの可能性が考えられる粘着面が作品に一切接触しない→ 作品への悪影響は限りなくゼロに近い
固定の強さ強い(ズレにくく安定する)弱め(大きな作品・重い作品には不向き)
適した作品サイズ中〜大サイズにも対応できる小〜中サイズ向き
保存性やや劣る(粘着部分による作品の劣化リスク)高い(非接着・保存に適している)
再利用・再額装やや困難(テープを剥がす時に損傷の可能性)容易(簡単に取り外せる)
見た目綺麗に仕上がりやすい若干浮くことがある
おすすめ用途展示・販売・一般的な額装・比較的丈夫な紙繊細な作品・古い紙・保存
使用時のコツ・注意点*中性・無酸性のテープを使用する
*作品の下部は固定しない
*テープはできるだけ少なく、最小限にする
*中性・無酸性のテープを使用する
*コーナーシールを4箇所いっぺんに貼らない
*額装用テープでシールの上を補強する

どちらの方法を選ぶかをざっくりまとめると、作品の「保存性」と「見せ方」のどちらを優先するか。あとは作品自体の大きさや重さです。
額装する作品の紙の状態をよく観察して決定してください。
また、浮世絵のような繊細な作品の場合は「ヒンジ固定」という保存額装のやり方があるので、専門の額縁店で相談してみてください。
どの方法でもまずは、酸化・劣化を防ぐ素材(中性・無酸性)を使って固定することが何より重要です。

あなたがもし、テープ選びで迷っていたら、おすすめの額装用テープをまとめた記事をチェックしてみてくださいね!⇩⇩⇩

📙「写真や作品を劣化させない!額装に使うべきおすすめのテープ」

もうすぐお盆シーズン🍆
そろそろお盆用品の準備や、お仏壇の掃除を始めている方も多いと思います。
この時期に、大切な方の遺影もぜひ確認してみてください。
お写真を固定しているテープに劣化の兆候はありませんか?変色したりパリパリになったりしてはいませんか?
テープが劣化しているということは、額装用ではないテープを使って固定している可能性が大きいです。
テープの接着剤でお写真が変色・劣化してしまう前に、テープを貼り替えることを検討してみてくださいね!

あなたの大切なものを末永く美しい状態で飾るために、この記事が参考になればとてもうれしいです!
次回は前回の続きで「浮世絵の額装」についてです
あなたの額装のお悩みを解決できるようにがんばるぞ、ぬん!


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